お話
狩りから帰ってきた彼の父親と母親がその来客に気が付いた。 2匹は彼を見るなり、何かに気が付いた。 「あなたは、あのペンギンですよね?」 「最初に空を飛んだあのペンギン…。」 そう聞かれた彼は二人をじっと見た。 2匹が昔、彼をバカにしてみていたペン…
彼は最後の力を振り絞り立ち上がった。 そして周りを見回した。 なぜだろう。 なぜだろう。 そこに広がっていた氷の世界は妙に懐かしい雰囲気を感じる。 彼はヨロヨロ歩き、あたりを見回した。 そして気づいた。 ここは故郷。 そうに違いない。 この場所もこ…
彼は目を覚ました。 眼前には大きな青い空が広がっていた。 彼はまだ生きていた。 立ち上がろうとしたが力が無かった。 もう手を伸ばしてもたどり着くことはできない。 眼前に広がる世界。 二人で飛んだあの日がまぶたに浮かんだ。 もうすぐ僕もそこへ行くよ…
それから何度か季節が過ぎた。 彼はまだ飛び続けていた。 彼の羽根はぼろぼろに傷つき、だんだんと飛行できる距離が短くなってきた。 彼の体に限界が近づいていた。 彼もそのことに気づいていた。 彼は空を滑空しながら、結局世界のどこにもあの青空を見つけ…
それからの彼は小鳥のお墓の周りでただ日を過ごすだけになった。 空を飛ぶことは無くなった。 彼にとって空は小鳥を思い出す辛い場所に感じられた。 いつも下を見て過ごした。 そうやって過ごすしかなかった。 下には彼のお墓しかなく、いつまでも彼はそのこ…
旅をつづけた彼ら。 それから何度か季節が廻った。 ある冬の事だった。 降り立った土地から友人が飛び立つことができなくなった。 小さな鳥と大きなペンギンでは命の量が違いすぎたのだ。 良く見てみるともう小鳥のの体はボロボロだった。 静かに目を閉じて…
二人の楽園探しの旅は始まった。 二人はいろんなところへ飛んで行った。 寒いところ、暖かいところ、別なペンギンたちが住んでいるところ。 しかし二人が落ち着いて暮らせそうな場所はなかなか見つからなかった。 楽園などそうそうないものなのかもしれない…
また何度かの季節が過ぎたころ、二人の努力はついに実を結んだ。 彼ははほんのわずかだが飛ぶことに成功したのだ。 その大きな翼で風を受け、滑空だけだったが。 それでも二人の目には希望と歓喜の色に染まった。 小鳥は自分の事のようにこのことを喜んだ。 …
それから二回目の冬が訪れた。 2年間の特訓の成果は彼の翼をより大きく、たくましくした。 そして彼の体はより大人の体になり、傷にも強くなった。 しかしながらいまだ彼は飛ぶことはおろか、滑空すらできなかった。 彼はまた空を眺めることが増えてきた。 …
彼は決意した。 そして行動した。 「きっとこの翼で飛べるはず。」 彼は空を見上げ、飛ぶためのトレーニングを始めた。 大きな翼をバタつかせ、どたどたと高台から落ち続けた。 なんどもなんども。 毎日毎日。 集落にいるペンギンたちは彼のその理解できない…
「どうして僕の翼はこんなに大きいのだろう…。」 一人ぼっちで過ごしていた彼はいつもそう思った。 ぺたりと座り込み空をずっと眺めるようになった。 毎日毎日、彼は空を見上げた。 空を見上げ飛んでいる鳥を見た時に彼はふと何かに気づいた。 そして自分の…
ペンギンたちが生息する小さな島。 そんな島で今日も新しい命が生まれた。 生まれてしばらくは両親も健在で、二人に愛され健やかに育った。 しかしほどなくしたある日。 いつも通りに狩りに出た両親は、そまま帰ってなかった。 彼はまだ幼毛が残っている時期…