青空を目指して2

どこまでも続く日々日常。ゲーム・音楽好きのおっさんの半生。日々日常とちょっとだけ思ったことの日記。

2001年宇宙の旅

気がつくと2011年な訳だよね、今。この本が書かれた1960年代には40年後にはこのぐらいの宇宙開発は進んでいると考えられていたんだろうけど、現実はたぶんその必要性を見出すことが出来なかったのか、宇宙開発はあるポイントから進まなくなっているように見える。当然人はモノリスを(たぶん)掘り起こしていないし、スペースチャイルドも生まれていないんだろう。
映画版はきわめて芸術的で感銘を受けたが、たぶんストーリーは相当意味不明だった。いろんなところで見たり聞いたりしていた知識によって終盤の展開はなんとなく、何らかの精神的世界を経て最終進化を迎えた、ってことぐらいにしか思っていなかったけど小説版を読んで全然違っていたことが良くわかった。HALとの対峙以降のエキサイティングな展開はとても面白くもあり、逆に映画版を見ていないとおそらく想像が全く追いつかない突拍子もない情報の羅列だった。僕の想像力の限界を超えている。
小説の前半は実に堅苦しい文章だった。文字の多くは一つ一つの場面を丁寧に丁寧に描写してあり、ほぼ状態描写のみに費やされている。ライトノベルなんかの真逆。延々と続く状況、状態の描写が見たこともない宇宙世界を堅苦しく描いている。この辺は実に窮屈だ。正直読むのが辛くなる。
それが最終章になり、いろんなテクノロジーを捨て始めるにつれて文章は加速して行き、いろんなものが脱ぎ捨てられていく感じを強く感じた。テクノロジーや肉体を捨て高度精神生命体への進化を文章でこの身で感じることができる。すげぇ。最後は細かい説明もなく、スペースチャイルドの遊びで終わる。すごい構成だなぁと強く感じる。


ここのところライトノベル、と言ってもハルヒとその他少し読んだだけだがやはり明らかにスタイルの違いを感じるな。さすがライトノベルというだけあり、軽い。文章の多くは会話の応酬とそのまんまな心理描写。わずかな舞台説明のみで、お約束の脳内補完によって読ませていくスタイル。まさにアニメ漫画世代の小説スタイルなんだろう。それに比べてこのSFの重いこと。圧倒的な文字情報量。作者の頭の中の世界を緻密な計算、取材、観察などを経て克明に描き出す。読者の勝手な妄想など入る余地を許さず、作者の伝えたい事を文章のみで頭に叩き込んでくる。こりゃそう簡単には書けないわな。


2001年宇宙の旅のストーリー自体に感動などはなく、展開も大体知っているものだから物語的な驚きも少ない。ほんとに人類のファーストコンタクトを傍らで眺めてきた印象。自分はこういう内容の物語(?)をどう評価していいのか良くわからない。面白いとは思うんだが、感情を揺さぶられるタイプの面白さではないんだ。でも面白くないなんてわけもなく。ヘビーなくせに読み出すと止まらない。自分にはこういうSFものを読んだ経歴がほとんどないために比較評価も出来ない。有り体かもしれないが自分自身もこの本がファーストコンタクトになったという事かもしれない。
ダレにでもお勧めしようと思う本でもないと思うが、昨今のいろんなSFチックな味付けの基本的なものが多く垣間見れていいかもしれない。

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)