それから何度か季節が過ぎた。
彼はまだ飛び続けていた。
彼の羽根はぼろぼろに傷つき、だんだんと飛行できる距離が短くなってきた。
彼の体に限界が近づいていた。
彼もそのことに気づいていた。
彼は空を滑空しながら、結局世界のどこにもあの青空を見つけることができなかったなぁと思っていた。
友人と一緒に飛んだあの青空を。
しかし彼の心にはすでに悔いは無かった。
絶望もなかった。
きっとこの孤独で自由な空こそが、彼らが求めてたものなんだと思い始めたからだ。
そう思えばどこまででも飛べる。
そう思うことが彼の唯一の心の支えになった。
この自由こそ僕たちの希望だ。
季節はつぎの春を迎えた。
飛び続けた彼の体はもうぼろぼろだった。
彼の翼ははもう彼を空へ押し上げることはできなくなっていた。
彼は春の風にまかせただただ流れていった。
とても心地よかった。
彼は途中で目を閉じた。
目を閉じると彼の横に友人を感じられた。
小鳥は笑っていた。
彼はそのまま風に流され落ちていった。
もうそれでいいと思った。
やっと友人のもとに行ける。
彼に悔いは無かった。