また何度かの季節が過ぎたころ、二人の努力はついに実を結んだ。
彼ははほんのわずかだが飛ぶことに成功したのだ。
その大きな翼で風を受け、滑空だけだったが。
それでも二人の目には希望と歓喜の色に染まった。
小鳥は自分の事のようにこのことを喜んだ。
彼もまた心底喜んだ。
そしてまた彼らはより高い空を目指すようになった。
どこまでも飛んで行けるように。
それからまた一つ冬を越したころ。
彼は自由に空に舞い上がることができるようになっていた。
初めて空を自由に飛んだ時は
眼下で呆然と彼を眺めるほかのペンギンたちを眺めて愉快だった。
彼は生まれて初めて声を上げて笑った。
友と一緒に飛ぶ空は爽快だった。
これからはどこへだって行ける。
この翼と君がいれば。
彼はそう思い決意した。
二人はこの狭い世界を飛び出す。
彼らは二人だけの楽園をめざしこの氷の世界から飛び出した。