青空を目指して2

どこまでも続く日々日常。ゲーム・音楽好きのおっさんの半生。日々日常とちょっとだけ思ったことの日記。

11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち

昨日から三島由紀夫つながりということで。相変わらず三島由紀夫のことはほとんど知りません。極右思想の極みみたいな人?ぐらいのイメージです。
この映画は三島由紀夫が「盾の会」を結成し自決するまでを淡々と描いた作品となります。
率直に思ったのは狂信っていつの世も一緒でいつの世も怖いね。出だしは些細なきっかけかもしれないんだけど、ひとが増えるにつれてもとの小さなかけらをどんどん増幅させ磨きをかけ外の世界と断絶し遥か高みに上っていく…。そうだね。今の世の中でも似たような「反コロナ」っているね。これもモデル的には同じものに見えるね。人間の強さと弱さ、そういうものを感じさせてくれるね。
この当時の学生運動物の映画とりあえず何本か見て、右も左も見たけど結局戦後の不安定なまま一気に成長をしていこうとする世間に不満を抱いた若者たちが日本に対して声と手を上げた、って言うことがよくわかってきた。右も左もスタート地点はあんまり変わらない。急激な変化への不安、不満。この一点に尽きるように見える。その先で昔の日本を理想とした右、今の日本の解体を夢見た左。ただ両派とも思想はあれどやってることは支配者階層への抵抗、みたいなものなんだろうな。今回左翼と右翼の違いを見ていたら、どっちかって言うとお祭り騒ぎで外に外に向かいパリピ的盛り上がりを見せたのが左。逆に内面世界を追求し内に内にこもり先鋭化していった右。って印象。でもその両方とも最後は派手な崩壊劇、自滅。だったんだろう。彼らのやってた行動は大局的に見たらあんまり変わりなく、俯瞰的思考なく熱量だけで走り抜けた人たち、って印象です。
映画の話に戻るとこれがどこまで忠実なのかどうかはわからないが、三島の精神的な強さと弱さが良く表現されていたと思う。彼のフィジカル的な強さはあまり表現できていなかったが、それは置いておく。理想を掲げ走り出した三島が作り出した盾の会。集う学生たち。左翼的ではない思想のが癖たちの焦り、反発の受け皿になった。自分の美学を追求できた三島は満足だったが、若い人たちは思想をどんどん精鋭化し、さらに行動を見せつけてくる左翼たちに焦りといら立ちを感じどんどん高まっていく。それに対して組織の巨大化と訓練という手段で道を進む三島だったが、自分の理想の軍隊が完成するにつれ、歳のせいもあろう、満たされて行って熱量を失っていく。それを見て業を煮やした若き学生たち。三島に詰め寄り行き場のない思いをぶつけ続ける学生たち。次第にその熱量に追い詰められ、逃げ場を失っていく三島。その先にあるのは自己の暴走の責任を取る演説、自決だったのだろう。
正直最後の演説もちょっと支離滅裂、って感じを受けた。あとで念のため本物の映像も見たが、本物はもっと支離滅裂に見えた。しかし最後まで結局美学を貫いた三島は決して周りの誰も傷つけることなくその思想の種だけを巻いて散っていったところは高潔で潔いと思う。過去から今まで日本に巣くうクソ責任者たちに見習わせてやりたいものかもね。種は今でも生きているとは思うが…。
でもまぁなんかこの映画で描かれた三島像って結構普通の良識人だったって感じた。自分の強い思想は持っていたが、本来それを成せる人ではなかった、という印象だ。ただただ追い込まれて窮地に立たされて背中を押され飛び立った人、ということに見える。彼が追い詰められていく様を主役の人はとても良い演技で見せていたと思います。
彼の日本に対する憂い、特に自衛隊の問題は個人的にはわかるし、今の世アメリカと協調路線ではあるがちゃんと正しい方向に少しずつ向かっていると思う。しかし天皇論は正直どうでもいい。第2次世界大戦の歴史を見てると個人的には天皇が神へと返り咲くことなんかまったく求めない。どこぞの顔の長い男に騙され地に落ちていくぐらい大衆化した今だし。自分にとってやっぱり「ヒトラームッソリーニヒロヒト」って3代独裁者と並べて語られていた映像の方がはるかにショックが大きかったし(第2次世界大戦時のアメリカのプロパガンダ映画)。
日本がいくら精鋭化したって、結局世界の中の一員でありグローバルな視点での動きが無けりゃ取り残されていくと思うんだな。狂信の先にある凶行は第2次世界大戦で有り、学生運動の行きつく先であるとつくづく思わされたし。
短い人生生きてきて、この日本の先進的発達を謳歌し満喫してきた自分には、過去のそういった暗い歴史に戻りたいとは思わないわけですよ。今でも右も左も無く、世界的にうまくバランスを取って騒乱なく生きていられるってとっても幸せだと思うのですよ。いくらいろんな人たちがこの時代のぬるさを指摘しようとも、破滅に導こうとも、今のこの世界はギリギリの均衡を保った、儚くも美しい世界だと思うのですよ。
そんな今の時代バンザイなことを思い出させてくれた、意外に面白かった映画でした。